あたしを撫でる、君の手が好き。
◇
放課後。茶道部の活動が終わって、帰る用意をしていると、お弁当箱を入れている小さなトートバッグがカバンに入っていないことに気が付いた。
昼休みに教室で桃佳とお昼を食べたあと、机の横にかけてそのままにしてきたかもしれない。
家にお弁当箱はもう一つあるけど、忘れて帰るとお母さんに嫌がられる。
「モモちゃん。あたし、教室に忘れ物してきちゃった」
「何忘れたの?」
「お弁当箱。とってくるから、先に先輩やみんなと帰っといて」
「昇降口で待っとくよ?」
「大丈夫。走ってすぐに追いつくから」
「そう?じゃぁ、ゆっくり進んどくね」
「ありがとう」
あたしは桃佳や先輩達に手を振ると、茶道部の茶室を出て教室に向かった。