あたしを撫でる、君の手が好き。

放課後の、しかも部活終了後の校舎内は、いつにも増して静かだ。

まだ日は落ちていないけれど、誰もいない校舎にひとりきりでいるのは寂しい。あたしは早足で廊下を歩くと、教室へと急いだ。

教室の電気を付けて自分の机のそばまで歩いて行くと、お弁当箱を入れたトートバッグはすぐに見つかった。思ったとおり、机の横に引っ掛けたままになっている。

トートバッグをとって、カバンに入れていると、教室に向かって廊下を歩いてくる足音が聞こえてきた。

他にも誰か、忘れ物をした人がいたんだろうか。

カバンのファスナーを閉じて教室を出ようとすると、廊下の足音がピタリと止まる。


「あれ、シロ?何してんの?」

ドアから顔を覗かせたのは、あっくんだった。

まさかタイミングよく、放課後の教室であっくんに会えるなんて思わなかった。

忘れ物をしてよかった、とひとりで舞い上がってしまう。


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