あたしを撫でる、君の手が好き。
「それに、るみって中学まで全然モテるタイプじゃなかったじゃん?」
「……、モテなくて悪かったですね」
あっくんの本音を知れて、嬉しくてちょっと感動していたのに。
これまでの話と何の関係があるのか、あっくんが微妙にディスってくる。
それに不貞腐れた声で返すと、あっくんが笑いながらあたしの髪をぐしゃぐしゃと引っ掻き回した。
「別に可愛くないとかそういうことじゃなくて、目立って他のやつを惹きつけるタイプじゃなかったってこと。だから放し飼いでもそこまで心配なかったんだけど……」
「放し飼い……?」
「高校に入ってから、富谷を筆頭に、るみのこと可愛いっていうやつがちらほら出てきて。そろそろ本気で繋ぎ止めとかなきゃ、どっかに逃げてっちゃうんじゃないかと思って」
「逃げちゃうって、あたしが?」
「そう」
放し飼いだとか、逃げるだとか。あっくんがあたしのことをまるでペットの犬みたいに話すのを聞いて、複雑な感情が胸を過ぎる。
あっくんはあたしのことを「好きだ」って言ってくれたし、晴れてあっくんの彼女にもなれたわけだけど。
あっくんが僅かにでも、あたしのことを犬っぽく思っていたことには変わりないらしい。
不機嫌に眉を寄せると、あっくんが指先であたしの眉間をそっと撫でてきた。