あたしを撫でる、君の手が好き。
「本気で繋ぎ止めようとしてダメだったら、もう諦めなきゃって思ってたんだけど……逃げられなくてよかった」
あっくんが軽く目を細めて、愛おしげにあたしを見つめる。
その眼差しに触れたら、あっという間に眉間のシワは解けてしまう。
我ながら単純だけど、あっくんに犬っぽく思われていた事実も、ちょっとどうでもよくなった。
「逃げるわけないじゃん」
あっくんから少し目線をそらしてつぶやくと、そっと右側の宙を探って、あっくんの左手の指先を握る。
あっくんがその手を繋いで握り返してくれたから、登校中の人目も忘れて幸せな気持ちになった。
あたしだって、あっくんのことが好きだったんだ。ずっとずっと、諦めきれずにバカみたいに。
だけど、関係が壊れるのが怖くて気持ちを伝えることができなくて……
離れないように繋ぎ止めておいてほしかったのは、あたしだって同じだ。