あたしを撫でる、君の手が好き。
じわじわ、満ちる。

茶道部の活動後。学校の最寄駅のホームで桃佳と一緒に電車を待っていると、同じ学校の制服を着た男子生徒達の集団がぞろぞろと改札から流れ込んできた。

桃佳と今日のお茶菓子の美味しさについて話していたあたしは、そのなかでよく知った茶色の髪が揺れているのに気が付いて言葉少なになる。

バスケ部の友達と笑って話しているあっくんにちらちらと視線を向けていると、桃佳が横から肘で突っついてきた。


「岸に声かけてくる?一緒に電車乗って帰れば?」

「え、それはいいよ。あっくんが一人でいるならまだしも、他の友達がいるときに邪魔できないし」

両手を顔の前でブンブンと振って遠慮すると、桃佳が揶揄うように笑う。


「るみ、付き合い出してからあんまり岸のことじーっと見つめなくなったね」

「そうかな?」

「そうだよ。代わりに、岸のほうがるみのことをじっと見てることが増えた気がする。ほら」

桃佳に言われてそっと振り向くと、友達と話しながらさりげなくあたしに視線を向けているあっくんと目が合った。

その瞬間、ほんとうに、ほんとーに僅かにあっくんが笑いかけてきたような気がして。ぼっと顔が火照る。

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