あたしを撫でる、君の手が好き。

あっくんの視線を避けるために桃佳の陰に隠れると、ホームに電車が入ってきた。

同じタイミングで、スカートのポケットでスマホがブブッと震える。

取り出してみると、あっくんからメッセージが1件届いていた。


『地元の駅降りたら、改札の外で待ってて』

あっくんからの誘いに、胸が躍る。

スマホを握りしめたまま振り向くと、あたし達が乗る車両の隣の車両の列の後ろのほうに並んでいたあっくんと目が合った。

あたしの視線に気付いたあっくんが、友達にバレないようにこそっと手を振ってくる。

あたしも小さく手を振り返すと、あっくんが頬を緩めながら電車に乗り込んでいった。


「るみー、ドア閉まるよ」

車内に消えていくあっくんの姿をぼんやり見送っていると、先に電車に乗り込んでいた桃佳があたしに呼びかけてくる。


「あ、待って!」

桃佳を追いかけて、急いで電車に飛び込む。

閉まったドアに凭れると、あたしは隣の車両にいるあっくんのことを考えながら、スマホをぎゅっと握りしめた。


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