あたしを撫でる、君の手が好き。
◇
地元の駅の改札を出たところでそわそわしながら立っていると、あたしよりも数分遅れであっくんが改札から出てきた。
「あっくん!」
早くそばに行きたくて駆け寄ろうとして、改札から出てきた女の人にぶつかりかける。
「すみません」
慌てて謝って、人の流れの邪魔にならないように端に避けると、呆れ顔のあっくんがゆっくり歩み寄ってきた。
「ほんと、全然学習しないな。気をつけろよ。周りよく見ろって、いつも言ってんじゃん」
「気を付けてるよ。あっくんがいないときは……」
ぼそっと零すと、あっくんが僅かに目を見開く。
あっくんの微妙な反応に、あたしは少し目線を下げた。
あたしだって、いつも不注意なわけじゃない。
あっくんがそばにいたら、頭のなかが全部あっくんに支配されちゃって。少し周りが見えにくくなるだけ。
黙って足元を見ていると、あっくんがあたしの頭に手をのせてきた。
そのまま乱暴にぐしゃっと髪を撫でられて、上目遣いにあっくんを見上げる。