あたしを撫でる、君の手が好き。




地元の駅の改札を出たところでそわそわしながら立っていると、あたしよりも数分遅れであっくんが改札から出てきた。


「あっくん!」

早くそばに行きたくて駆け寄ろうとして、改札から出てきた女の人にぶつかりかける。


「すみません」

慌てて謝って、人の流れの邪魔にならないように端に避けると、呆れ顔のあっくんがゆっくり歩み寄ってきた。


「ほんと、全然学習しないな。気をつけろよ。周りよく見ろって、いつも言ってんじゃん」

「気を付けてるよ。あっくんがいないときは……」

ぼそっと零すと、あっくんが僅かに目を見開く。

あっくんの微妙な反応に、あたしは少し目線を下げた。

あたしだって、いつも不注意なわけじゃない。

あっくんがそばにいたら、頭のなかが全部あっくんに支配されちゃって。少し周りが見えにくくなるだけ。

黙って足元を見ていると、あっくんがあたしの頭に手をのせてきた。

そのまま乱暴にぐしゃっと髪を撫でられて、上目遣いにあっくんを見上げる。


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