あたしを撫でる、君の手が好き。


「るみが早く帰りたいなら、このまま真っ直ぐ帰るけど。別に腹減ってないし」

ひとりで思い出してニヤケそうになっていると、あっくんがあたしのことを家のほうへと引っ張った。


「あ、違う。そうじゃないの。ちょっと嬉しくなっちゃって。どっか寄って帰ろうよ」

あたしだって、あっくんと少しでも長く一緒にいられたら嬉しい。

足早に駅前を去ろうとするあっくんを引き止める。

どこに寄り道しようかと、あたりを見渡して、あたしはふとあることを思い付いた。


「そうだ、あっくん。今からうちに来る?」

あたしの提案に、あっくんが一瞬ぽかんとする。だけどすぐに、口端を引き上げてふっと息を漏らした。


「それって、るみの部屋に来いって意味?鈍感なくせに、部屋に誘ってくるとか急に積極的じゃん」

あっくんがそう言って、意地悪な笑みを浮かべる。

その言葉を聞いて、あたしは付き合い出す前に、あっくんが突然うちにやって来たときのことを思い出した。

そういえばあのとき、ふたりだけになった部屋であっくんに抱きしめられたんだった。

付き合う前でも結構甘い雰囲気になったんだから、もし今だったらもっと……

勝手な想像を膨らませてしまったあたしの頬が、カーッと燃えあがった。

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