あたしを撫でる、君の手が好き。

もう帰っちゃうのか。

さっきまですぐそばで触れ合っていたあっくんの熱を思い出して、制服の胸元をぎゅっとつかむ。

淋しい気持ちで見上げると、あっくんがふっと目を細めて微笑んだ。


「その顔、ひとりで留守番しなきゃいけないときの、ばーちゃんちの犬みたい」

「犬……?」

せっかく、人が感傷的な気持ちになっているのに。そんなふうにバカにして。

むっと眉を寄せると、あっくんがあたしを愛おしげに見下ろして、ぐしゃりと頭を撫でた。

それから、腰を低く屈めると、あたしの耳元でささやいてくる。


「今度は俺の家に来ていいよ。親いないときに」

鼓膜を震わす甘い誘いに、心臓がドクンと跳ね上がる。


「また明日な、るみ」

悪戯っぽく笑ったあっくんが、熱くなったあたしの頬に、ちゅっと可愛いキスを落として、部屋から出て行った。



 
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