あたしを撫でる、君の手が好き。
だってるみは、本当に。おとなしめだけど、ふつーに可愛い。
るみが目覚めないのをいいことに、髪の毛に差し入れた手で柔らかな栗色の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱す。
「誰にも触らせるつもりはないけど、ほんとは誰にも見せたくない」
心の奥に溜めていた独占欲が、るみの頭上にぽたりと落ちる。
噂のネタにされて、他のやつに見られるのも嫌だとか。そんなこと、るみにバレたら、重すぎてひかれるかも。
るみのふわふわの髪を、満足するまでひとしきりに撫で回したあと、俺は彼女の耳元に口を寄せた。
「るみー、起きろー」
耳元で呼びかけたら、るみの瞼がピクリと痙攣した。
「るみ、起きろって」
呑気に寝ている、るみの頬を指先で軽くつまんで引っ張る。目を開けて俺を見上げたるみは、笑えるくらいにとぼけた顔をしていた。
「あー、あっくんだ」
「あっくんだ、じゃねーよ。待ってろとは言ったけど、寝てろとは言ってない」
「ごめん。なんか、あっくんの席、窓際であったかくて」
机の上で頭をごろごろとさせながら、るみがふにゃっと笑いかけてくる。その顔が可愛い。
最近は、その顔で笑いかけられたら、何でも許してしまいそうになるから、自分でもヤバいと思う。