あたしを撫でる、君の手が好き。

「だからって、いつまでも寝てたら時間なくなるって。買い物行くんだよな?」

「うん、行く」

今度は嬉しそうに、にこっと笑いかけてきたるみに、堪らず手を伸ばす。

その頭に手をのせて、くしゃりと撫でたら、あたりまえなんだけど、眠っているときは無反応だったるみが、嬉しそうに目を細めた。

その仕草が、犬っぽい。もし尻尾があれば、絶対左右に揺れてると思う。


「じゃー、行こう」

るみの手を軽くつかんで引っ張ったら、椅子から立ち上がった彼女がついてきた。


「欲しいもの、決めた?」

「うーん。まだ迷ってる」

歩きながら、繋いだ手の指を緩く絡める。


「でも、あっくんからもらえるなら、正直何でもいいんだよ」

ふふっと笑ったるみが、絡めた指をぎゅっと握りしめてくるから、ほんの少しだけ動揺して、指先がピクリと跳ねた。


「本当に何でもいいの?」

「うん、何でもいい」

隣を歩く、るみの顔を盗み見る。

僅かに頬を紅潮させたその横顔は、なんだかとても機嫌が良さそうだった。

その理由は、今日がるみの誕生日だからだと思う。

夜は、るみのお母さんがケーキを買って、るみの好きなものを作って待っているらしいので、俺は部活が終わってから夕飯までのるみの時間をもらった。


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