あたしを撫でる、君の手が好き。



「シロ」

最寄駅の改札を出たところで、どこかからあっくんに呼ばれたような気がした。

改札口の前で立ち止まってきょろきょろと辺りを見回してみたけれど、空耳だったのか、近くにあっくんの姿は見えない。

あっくんの声だったら聞き間違えたりしないと思うんだけどな。

がっかりして肩を落とすと、人混みのなかから伸びてきた手があたしの腕を引っ張った。

恐怖を感じてドキリとする。けれど、すぐ目の前に見えた背中があっくんのものだとわかった途端、あたしの胸のドキドキは恐怖とは全く違うものになった。


「どこ見てんだよ。ていうか、改札の真ん前で立ち止まってたら、他の人の通行の邪魔だろ」

改札前の人混みからあたしを連れ出したあっくんが、呆れ顔で振り向く。


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