あたしを撫でる、君の手が好き。
やっぱり、聞こえてきた声は空耳じゃなかったんだ。
「あっくん、今部活帰り?」
嬉しくなって、へらっと笑いかけたら、あっくんが顔を逸らしてあたしの腕を離した。
「そう。電車に乗るとき、別の車両に乗るシロのことが見えたから。シロも今日部活だったんだな」
「そうだよ。今日のお茶菓子も美味しかったんだー」
お抹茶と一緒に出てきた苺大福の味を思い出してにんまりとすると、あっくんがプッと吹き出した。
「そういえばシロって、お菓子につられて茶道部に入ったんだよな」
「つられて、って。なんかあたしが食いしん坊みたいじゃない」
「え、違うの?」
あっくんが、揶揄うようにあたしを見下ろしてくる。
ニヤニヤ笑うあっくんを軽く睨みあげるものの、全否定はできない。