あたしを撫でる、君の手が好き。
雑な動きなわりに優しいあっくんの触り方に、勝手に胸がときめいてしまうのが悔しい。
あっくんがあたしをそんなふうに撫でるのは、おばーちゃんちで飼ってたトイプードルの代わりなのに。
恨めしげにジト目で見上げたら、あっくんが不意に優しい目をして笑いかけてきた。
どこを見ていいのかわからなくなってしまったあたしは、うろうろと視線を彷徨わせた後に、あっくんのスニーカーに視線を落とす。
ジリッと地面を擦りながら少しだけ足をずらしたら、あたしのローファーのつま先があっくんのスニーカーのつま先とくっついた。
たったそれだけのことで、あっくんのことを意識した足先がそわそわとする。
ねぇ、あっくん。あたしはこのままずっと、あっくんの『ペット』みたいな存在のままなのかな。
あたしはもっと違う位置付けで、あっくんの隣に立ちたいよ。
それは、贅沢な望みだと思う?
あたしはあっくんのスニーカーをじっと睨むと、くっつき合ったつま先をほんの少しだけ蹴飛ばした。