あたしを撫でる、君の手が好き。
「シロちゃん、書いてきた」
あたしの横を通り過ぎるときに、富谷くんが笑顔でそう話しかけてくる。
「あ、うん」
あまり納得のいかないままに曖昧に頷いたとき、ふと前のほうから視線を感じた。
振り向くと、あっくんがあたしのことを睨むみたいにじっと見ている。
あっくんもきっと、あたしが応援団をやるなんて似合わないと思ってるんだろうな。
あたしに向けられたあっくんの眼差しが、そのことを強く物語っている。
あたしだって、できればすぐに訂正しにいきたいけれど。
せっかく富谷くんが黒板に書いてくれた名前を消しにいくのも、申し訳ないような気がする。
それに……
「体育祭楽しみだねー」
富谷くんが後ろからそんなふうに話しかけてくるから、「本当は応援団は嫌だ」なんてますます言い出せない。
「うん、そうだね」
あっくんの不満そうな視線を感じながらも、あたしは富谷くんの言葉に曖昧に頷くしかなかった。