あたしを撫でる、君の手が好き。

体育祭の係が決まると、担任がひとこと話してホームルームが終わる。

クラスメートたちが帰宅の準備でざわつき始めると、そのタイミングを見計らったように、教室の前のドアから徳永さんがひょこっと顔を覗かせた。

徳永さんは、富谷くんが入っているサッカー部のマネージャーらしい。だからてっきり富谷くんを呼びにきたのかと思ったのに。


「岸くん!ちょっといいかな?」

徳永さんが呼んだのは、あっくんだった。

え?!あっくんと徳永さんて、知り合いだったっけ……?

あたしが知る限り、あっくんと徳永さんの親交はないはずだ。

それなのにあっくんは、徳永さんの呼びかけにごく自然に応じていた。

ふたりで何を話しているんだろう。

ドアのそばで親しげに話すあっくんと徳永さんが気になり過ぎて、帰宅準備をしていた手が止まる。


< 36 / 227 >

この作品をシェア

pagetop