あたしを撫でる、君の手が好き。
体育祭の係が決まると、担任がひとこと話してホームルームが終わる。
クラスメートたちが帰宅の準備でざわつき始めると、そのタイミングを見計らったように、教室の前のドアから徳永さんがひょこっと顔を覗かせた。
徳永さんは、富谷くんが入っているサッカー部のマネージャーらしい。だからてっきり富谷くんを呼びにきたのかと思ったのに。
「岸くん!ちょっといいかな?」
徳永さんが呼んだのは、あっくんだった。
え?!あっくんと徳永さんて、知り合いだったっけ……?
あたしが知る限り、あっくんと徳永さんの親交はないはずだ。
それなのにあっくんは、徳永さんの呼びかけにごく自然に応じていた。
ふたりで何を話しているんだろう。
ドアのそばで親しげに話すあっくんと徳永さんが気になり過ぎて、帰宅準備をしていた手が止まる。