あたしを撫でる、君の手が好き。
「さっきからなに難しい顔してんだよ」
完全に意識が飛んでいたところへ、その声だけが妙にクリアに耳に届く。
顔を上げると目の前にあっくんが立っていたから、驚いて心臓が口から出そうになった。
「え、べ、別に……あっくん、今日部活は?」
「これから行くところだけど」
「あ、そ、そっか。頑張って。あたしは今日は部活休み」
「知ってる」
ついさっきまで、頭の中であっくんのことをばかり考えていたせいか、吃ってしまって自然に話せない。
そんなあたしのことを、あっくんは不審げな目で見ていた。
「シロさぁ、なんで急に応援団なんてやる気になったんだよ」
「え?」
「だから、応援団。シロ、昔から目立つやつにはあんまり出ないだろ」
話が変わったことについていけずにぽかんと口を開けると、あっくんがそう言い直した。