あたしを撫でる、君の手が好き。

「俺だって言ったことあるじゃん。シロのこと『かわいー』って」

あっくんの手が、あたしの髪を乱暴にぐしゃぐしゃと撫でる。

その言葉も仕草もあたしをドキドキさせるけど、あっくんが気まぐれに口にした『かわいー』と富谷くんの言う『かわいー』の意味が違うことくらい、あたしにもちゃんとわかっていた。


「あっくんのはほら、意味がちょっと違うでしょ?」

あっくんが言っているのは、おばあちゃんちで飼ってた犬みたいだからとか。ペットみたいだとか、そういう意味での『かわいー』だ。

見上げて首を傾げると、あっくんが少し不服そうな目であたしを睨んでくる。

それから、いつもより強い力で、嫌がらせみたいにあたしの髪がぐしゃぐしゃと撫でてきた。


「ぐちゃぐちゃ」

「誰のせいよ」

気が済むまで人の髪の毛を掻き乱したあとに、あっくんが笑う。


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