あたしを撫でる、君の手が好き。
文句を言いながら乱れた髪を手櫛で整えるあたしを、あっくんがじっと見てくる。
「何?」
「別に。俺、そろそろ部活行くわ。シロに構うのも飽きたし」
「また人を犬みたいに……」
じとっと睨むと、あっくんがなんだか少し淋しそうに笑ってつぶやいた。
「────けどな」
「え?なに?」
近くにいるはずなのに、あっくんの声が小さすぎてよく聞こえない。
顔を寄せて聞き返すと、あっくんがあたしから身を引いた。
「何もないよ。また明日な」
あっくんが何を言っていたのかが少し気になる。
けれど、手を振って去っていくあっくんを追いかけてまで問い詰めることでもないような気がして。
「また明日ね」
あたしもあっくんの背中に小さく手を振り返した。