あたしを撫でる、君の手が好き。




「はぁ……疲れた……」

「シロちゃん、ため息深すぎ」

ぐったりと肩を落として盛大にため息を吐くと、富谷くんが組んだ両腕をお腹にあてながらははっと笑った。


「だって、あの振り付け、何回やっても全然覚えられないんだよ。あたしがワンテンポ遅れるたびにじろって睨んでくる3年の先輩の目がほんとに怖い……」

両腕で肩を抱き締めて震えるあたしを見て、富谷くんがお腹を押さえてさらに愉しげに笑う。

他人事だなーと思いながら横目に見たら、富谷くんがあたしを振り向いてにこりとした。


「でもシロちゃん、だんだん上手くなってるじゃん。多少の失敗は俺がフォローしてあげるから大丈夫だよ」

にこにこ笑いかけてくる富谷くんに、心強さ半分、不安半分で曖昧に頷く。

体育祭の係や出場競技が決まってから、本格的な練習が始まったのが一週間ほど前。

体育祭までは、放課後の部活動の時間が削られて、その分が体育祭の練習時間に割り当てられる。

富谷くんの強引な誘いかけによって応援団に入ってしまったあたしは、毎日行われる放課後練習にかなり疲弊していた。

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