あたしを撫でる、君の手が好き。


「どうして?」

「だって、幼なじみだから」

不満げな顔で訊ねてくる桃佳に、そう答えながら笑う。


もしあたしがあっくんに「好き」だと伝えることで、幼なじみの繋がりまでなくなってしまったら……

それを考えたら、怖くて気持ちを伝えられない。

これまで築いてきた全てを失ってしまうくらいなら、告白せずにあっくんと繋がっていられるほうがずっといい。


「それって、面倒くさい」

「そうだねー」

明るく笑って流そうとしたら、桃佳がやっぱり不満げな顔であたしをじっと見てきた。


「そうやって二の足踏んでる間に、ほかの子に横から攫われたらどうすんの?」

「どうしよう」

ふざけて笑うと、桃佳が呆れて無言になる。

今はふざけていられるけど、もしそうなったら……死んじゃうかも。精神的に、なんて。


それくらいに、あっくんのことが好きだ。




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