あたしを撫でる、君の手が好き。
◇
「はぁー、無事に終わってよかった」
チームの応援合戦が終了してほっと息を撫で下ろしていると、並んで一緒に歩いていた富谷くんが「お疲れさま」と笑いかけてくれた。
「シロちゃん、本番が一番うまくテンポが合ってたんじゃない?」
「ほんと?それならよかった」
応援合戦の得点は、閉会式のときに発表されるからまだわからない。
だけど、これでもう練習に参加しないでいいし、3年生の先輩に怖い目で睨まれることもない。そう思ったら、達成感よりも解放感で力が抜けた。
「富谷くんも、あたしとペアで迷惑いっぱいかけたよね。いつもフォローしてもらってありがとう」
振り向いて笑いかけると、富谷くんが鼻先をちょっと擦りながら顔を逸らした。
「いや、全然。無理やりシロちゃんのこと誘ったのは俺だし。むしろ、役得でした」
「ん?」
「いや、別に。それよりシロちゃん、衣装着替えちゃう前に一緒に写真撮ろうよ。応援席にスマホ置いてるから、取りに行こう」
「え、うん」