あたしを撫でる、君の手が好き。
「記念写真も撮ったし、着替えてこよっかな」
「うん、もうすぐ昼休憩だしね」
あたしと富谷くんは途中まで一緒に歩いて行って、それぞれの更衣室の方向と別れた。
女子の更衣室に向かう途中、体育倉庫から備品を出しているあっくんの姿が見えた。
どうやらあっくんは一人で作業をしているようで、朝からずっとべったりとくっついていた徳永さんは見当たらない。
話しかけるチャンスだと思ったあたしは、更衣室での着替えは後回しにして、あっくんのほうに駆け寄った。
「何か手伝おうか?」
あたしが背中から声をかけると、体育倉庫の前で備品の数を数えていたあっくんが驚いたように振り返る。
だけど背後に立ったのがあたしだと気付くと、あっくんが気の抜けた顔で笑った。
「なんだ、シロか。もう終わるし、いいよ」
「なんか、大変そうだね。体育祭委員」
「あー、特に1年に回ってくる仕事は雑用ばっか」
あっくんは顔を顰めて面倒臭そうにボヤいたあと、あたしを見て軽く目を細めた。