あたしを撫でる、君の手が好き。
◇
午前の授業が終わったあと、後ろの席の富谷くんにちょんっと背中をつつかれた。
「ねぇねぇ、白山さん。さっきの授業、ちゃんとノートとってた?」
「うん、とってたよ。写す?」
「いい?体育頑張ったのと、腹減ったのとで途中からすっかり意識失っちゃって……」
富谷くんが、頭の後ろを掻きながら笑う。
「体育のあとの授業って、疲れちゃうよね。あたしも途中で寝落ちそうになった」
富谷くんの方を振り向きながら机の中を探って、今授業が終わったばかりの英語のノートを差し出す。
それを大事そうに受け取った富谷くんは、あたしとしっかり目を合わせてからにっこりと笑った。
「そんなこと言って、白山さんはいつも真面目に授業聞いてるじゃん。放課後まで借りてていい?」
「もちろん。好きなだけどうぞ」
「ありがとう!」
富谷くんの人懐っこい笑顔につられて、あたしも彼に笑い返してしまう。