あたしを撫でる、君の手が好き。

いつも明るくて、先生に面白い返しをしては教室を湧かすことも多い富谷くんは、クラスのムードメーカーだ。

誰とでもすぐに打ち解けてしまう富谷くんは、あっくんとも仲が良い。

あたしはあまり男子の友達が多いタイプではないけれど、富谷くんはクラスの中でも話しやすい男子のひとりだ。


「あのさー、白山さん」

ノートを渡し終えて正面に向き直ろうとしていると、富谷くんがまた何か話しかけてきた。他にも用があるんだろうか。


「しーろ」

富谷くんのほうを振り向こうとしたとき、正面から近づいてきたあっくんに呼びかけられた。

あっくんの声を聞いたあたしの全意識は、ほとんど条件反射的に彼のほうに向いてしまう。

そんなふうになったのは、いつからだろう。

あたしの中であっくんは一番で、絶対だ。

先にあたしを呼んでくれたのは富谷くんなのに。あっくんに呼ばれたら、他のことは全て吹っ飛んでしまうのだ。




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