あたしを撫でる、君の手が好き。

「あー、うん。だから、悪いけど行けないって。あいつ送って行かなきゃだし、また今度────……」

徳永さんとの会話に気を取られているあっくんは、あたしが保健室から出てきたことに気付かない。

それも悲しかったけれど、「送って行かなきゃ」となんだか義務みたいに話されているのもショックだった。
あっくんの優しい言葉に一瞬でも喜んでしまった自分がバカみたいだ。

ほっとくと勝手に涙が滲み出してきそうで、奥歯を噛み締めて必死に堪える。

それから静かに保健室のドアを閉めると、なるべく物音を立てないように昇降口に向かった。

いつだったか桃佳が言ってたことが、ついに本当になっちゃった……

そのうちあっくんのこと、横から誰かに持っていかれちゃうって。

そういうのはもうちょっと先だといいな、ってずっと思ってたけど。現実はそんなに甘くないな。

ほとんど床に鞄を引き摺りながら、とぼとぼと廊下を曲がる。そのとき。

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