あたしを撫でる、君の手が好き。


「どうしたの?」

目の前で立ち止まったあっくんを見上げる。そんなあたしに、あっくんは笑顔で手のひらを差し出してきた。


「シロ、お手」
「へ?」

あっくんがあたしの目を真っ直ぐに見ながらそう言うから、ついうっかり、彼の手のひらの上に自分の右手をのせてしまう。

あっくんは浅はかなあたしの行動にニヤリとすると、もう片方の手をあたしの右手にのせて、両手でぎゅっと包み込んできた。


「何?」

教室の真ん中で突然手を握られたことにドギマギしていると、あっくんがあたしの手を離した。

あっくんに無理やりに握らされた右手に、なんとなく違和感がある。

上向けに手のひらを開くと、そこにはピカピカの500円玉。


「あっくん、これ……」

まさかお小遣いじゃないだろうし。

不思議に思いながら首を捻ると、あっくんがあたしの肩をぽんと叩いてにっこりと微笑んだ。

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