あたしを撫でる、君の手が好き。
「シロ!」
パタパタと勢いよく駆けてくる音とあたしを呼ぶ声が、廊下に響き渡った。
ビクッと肩を震わせて立ち止まると、追いかけてきたあっくんがあたしの腕を捕まえる。
「ひとりでどこ行く気だよ」
真後ろから聞こえてくるあっくんの声が怖い。
振り向いて見なくても、顔を顰めてあたしを睨んでいるんだろうなというのが、低い声のトーンでわかった。
ちゃんと止まっているのに。逃げ出そうとなんてしていないのに、腕を締め付けるあっくんの指が痛い。
「あっくん、電話してたみたいだから、先に帰ろうかなーって」
できるだけ軽い口調でそう言ったら、あっくんの指の締め付けがキツくなった。
「あっくん、ちょっと痛い……」
うつむいて、へらりと笑う。指の締め付けも痛いけど、首の後ろに感じるあっくんの視線も痛かった。