あたしを撫でる、君の手が好き。
「俺、言わなかったっけ?送る、って」
あっくんが、静かに息を吐く。
怒っているみたいに聞こえるあっくんの少し低い声や、面倒くさそうなため息が、あたしを悲しくさせた。
「義務で送ってもらわなくてもいいって思ったから」
「どういう意味?」
「他の人との約束を断ってまで、あたしのこと送ってくれなくてもいいってことだよ」
「他の人との約束って?」
「さっきの電話の会話、少しだけ聞こえた。また今度って、約束断ってたでしょ。相手は徳永さん?」
「あぁ、あれは……」
あっくんが言葉を濁す。そのことが、あたしをさらに悲しくさせた。
否定、しないんだ────……?
「今からでも間に合うなら行ってきなよ。あたしはひとりでも平気だし」
強がった声が震えそうで、バレないように笑って誤魔化す。