あたしを撫でる、君の手が好き。
「ペット、みたいなもん……?」
「わかってるなら、おとなしく俺の言うこと聞け」
低い声で命令するように言ったあっくんが、あたしの首の後ろを押さえて振り向かせた。
あっくんが鋭い目つきであたしを睨み下ろしながら、手を伸ばしてくる。
今度は何をされるのかと思ってビクついて目を閉じると、頭のてっぺんに落とされたあっくんの手があたしの髪をくしゃりと撫でてきた。
怖い目で睨んできた人と同一人物の行動とは思えないくらいの優しい仕草に、胸がトクンと震える。
恐々そっと目を開けると、あっくんが何かを堪えるように、唇をきつく引き結んでいた。
「送ってく」
ぼそりとそう零したあっくんが、あたしから顔を背けて、頭にのせた手を退ける。
肩が触れ合うすれすれの距離であたしの横をすり抜けると、あっくんは先に歩き出した。
少し戸惑いつつも、あたしも遅れてあっくんの背中を追いかける。