あたしを撫でる、君の手が好き。
一度も振り向かずに一定のスピードを保って歩くあっくんが、今もまだ怒っているのか、それとももっと別の表情を浮かべているのか。
あっくんの背中しか見えないあたしには、全くわからない。
わかるのは、あたしとあっくんの関係性がこれまでとは変わってしまうんじゃないかということ。それも、良くないほうに。
恋愛対象どころか、幼なじみとして認識してもらえているかどうかすら怪しいあたしは、そのうちあっくんの『ペット』的なステータスすら失うかもしれない。
あっくんが撫でてくれた髪に触れて、こっそりとため息を吐く。
あっくんは、いつまであたしの髪に触れて笑いかけてくれるだろう。
雑なのに優しい触れ方をするあっくんの手が永遠に離れてしまう日は、もうすぐそこまできているのかもしれない。
それを考えたら、胸がズキズキと痛かった。