あたしを撫でる、君の手が好き。
ふたりのやりとりが終わるのを一応待っていると、あっくんが富谷くんの肩を捕まえたままあたしに視線を向けた。
「何でもないからさっさと帰れよ」
無表情なあっくんが、あたしに冷たくそう言い放つ。
その言い方が、あたしを拒絶しているみたいで悲しかった。
「あ、亜聡!お前勝手に……シロちゃん、ちょっと待って」
「桃佳、帰ろ」
富谷くんが何か言っているのが聞こえたけれど、あっくんの冷たい声にすっかり傷ついてしまったあたしには、平静な顔でそこに留まる余裕なんてなかった。
「るみ、待ってよ」
うつむいて早足で歩き出したあたしを、桃佳が慌てて追いかけてくる。
「どうしたの、るみ?岸とケンカでもした?」
桃佳に訊ねられて、ゆるゆると首を横に振る。
ケンカ、はしてない。たぶん。だけど、体育祭の日のアレは、実質的にケンカだったのかもしれない。