あたしを撫でる、君の手が好き。
「ごめ……」
謝る理由なんて全く頭に浮かばない。だけどあっくんの顔を見ていたら、あたしのほうが謝らなければいけないような気持ちにさせられた。
謝罪の言葉を制するように、あっくんがあたしに手を伸ばす。
その手は優しくあたしの頭にのせられただけなのに、無表情なあっくんを前に、あたしは怯えたように肩をビクつかせてしまった。
それに気付いたあっくんが、いつもよりもずっと遠慮がちにあたしの髪を触って手を退ける。
「シロは何も悪くない。今日はゆっくり休んで」
「うん」
「またな」
あたしに笑いかけるように目を細めたあっくんの表情は、どこか寂しげだった。
なんとなく気になる別れ方はしたけれど、激しい言い合いもしていないし、あたしに笑いかけてきたあっくんだってもう怒ってはいなかったはずだ。