ボーダーライン。Neo【上】
 流れるサイドの髪を耳にかけ、そっと頬杖をつく。

「……さっき。中にゴッホの‘ひまわり’の絵があったでしょ?」

「あ、うん」

「今見たやつは十五本のひまわりだったけど。他にも、花瓶に挿さったひまわりは描かれててね。全部で七点あると言われてるの」

「へぇ。そんなに?」

「うん。ゴッホにとってひまわりは、ユートピアの象徴だから」

「先生、詳しいね?」

 興味を示す秋月くんを見て、ふと思い出した。そういえばこの話は、絵画が趣味の国語教師、田崎先生の受け売りだったな、と。

「好きなの、ひまわりが。花の中でも特別に」

 普段から田崎先生を毛嫌いする秋月くんなので、先生の話題は避けようと思い、あたしは花に限った話をする。 

「そうなんだ?」

「ん。だって太陽の花だし、明るいもの。あ、花言葉も素敵なのよ?」

「花言葉?」

 秋月くんは、キョトンとしたかと思えばフッと口元を緩めた。

「ひまわりの花言葉は、‘あなただけを見つめてる’……何かロマンチックよね」

 ひまわりの花束を誕生日なんかに貰ったら、きっとコロッと落ちちゃうだろうなぁ、と。今までに何度か考えた事がある。

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