ボーダーライン。Neo【上】
むしろそれがいけなかった。
秋月くんはあたしの抵抗に反発して、あたしの両手を拘束しにかかる。そして同時に、キスはより深いものになった。
このままじゃいけない、とあたしは無理矢理顔を背けた。
唇が離れた拍子に、両手の拘束も解かれる。
彼を見て、何で、と問いたかった。
けれどあたしは、そうしなかった。秋月くんの表情を見て、そう出来ないと悟った。
だからとにかく、今起こった事を、無かった事として取り繕おうと思った。
「あ。ビール。こぼしちゃったね。どうしよ、怒られちゃう……っ」
ウッドデッキには思った通り、大きなシミが出来ていた。
出来るだけ動揺を見せないように、いつものお姉さんの顔で、取り敢えず秋月くんと距離を取ろう、と。自然な動作で落ちた缶を拾おうとするのに、秋月くんがそれを阻止した。
あたしの肩をグッと掴み、動く事を禁じていた。
「いいから、そんなの」
「でも」
彼は肩から手を移し、パーマのかかった髪に触れた。あの、繊細でしなやかな指先で、あたしの髪を触り、頬を撫でた。
「秋月、くん?」
彼の真剣な瞳を、見ていられないと思った。
あたしは男の人の、この瞳の色を知っている。
秋月くんはあたしの抵抗に反発して、あたしの両手を拘束しにかかる。そして同時に、キスはより深いものになった。
このままじゃいけない、とあたしは無理矢理顔を背けた。
唇が離れた拍子に、両手の拘束も解かれる。
彼を見て、何で、と問いたかった。
けれどあたしは、そうしなかった。秋月くんの表情を見て、そう出来ないと悟った。
だからとにかく、今起こった事を、無かった事として取り繕おうと思った。
「あ。ビール。こぼしちゃったね。どうしよ、怒られちゃう……っ」
ウッドデッキには思った通り、大きなシミが出来ていた。
出来るだけ動揺を見せないように、いつものお姉さんの顔で、取り敢えず秋月くんと距離を取ろう、と。自然な動作で落ちた缶を拾おうとするのに、秋月くんがそれを阻止した。
あたしの肩をグッと掴み、動く事を禁じていた。
「いいから、そんなの」
「でも」
彼は肩から手を移し、パーマのかかった髪に触れた。あの、繊細でしなやかな指先で、あたしの髪を触り、頬を撫でた。
「秋月、くん?」
彼の真剣な瞳を、見ていられないと思った。
あたしは男の人の、この瞳の色を知っている。