ボーダーライン。Neo【上】
 恋人の圭介が、あたしを抱く間際、いつもこんな目をしていた。理性を無くした、オスの本能むき出しの色だ。

 年下の男の子として接していただけに、あたしは戸惑った。確かに、秋月くんには恋愛感情を抱いた時期もあった。

 でもそれは一時的なもので、現実的な感情じゃなかった。

 だって。秋月くんとの年の差を考えると、結婚相手には程遠いから。

 あたしは、彼を好きな自分を、受け入れる事から逃げた。本当はもう夢中になってしまいそうなほど、好きになっていたのに、ずっと拒んでいた。

 自覚したら悲しくなった。

 教師だから、生徒だから、というのは所詮建前にしか過ぎず、あたしは本当に身勝手な人間だと思った。

 あたしの理想は、二十代後半で結婚し、三十までに子供を産む事だ。

 若いうちに子育てして、若くて綺麗なお母さんになるのを夢見ていた。

 だからそのためには、二十代で付き合う彼氏は少し年上で、収入の安定した人と決めていた。

 その条件に、秋月くんはどう足掻いても当てはまらない。

 彼が年上なら良かったのに……

 あたしはキュッと唇を噛んだ。

 あたしの何がそうさせたのか、秋月くんは切なそうに眉を寄せ、あたしの顎を持ち上げた。再び唇を塞がれる。

< 126 / 269 >

この作品をシェア

pagetop