ボーダーライン。Neo【上】
 彼の熱っぽいキスに、あたしは眉を寄せた。

 だから、駄目、なんだよ……と。

 今度は全力で彼のキスを拒んだ。曖昧な態度を取っていたら、きっとどんどんエスカレートしていく。

 しかしながら、そんな抵抗なんて物ともせず、秋月くんは片手だけであたしの頭を抱え、抱きすくめる様にキスを繰り返した。

 唇を舌でなぞられ、甘噛みされると、意思に反してビクッと体が震えてしまう。

 やがて彼の両手があたしの頬を包み込んだ。

 口付けは甘く優しいものに変わり、次第に瞼が下がる。

 唇を割って入ってきた舌が、あたしの理性を崩壊させた。

 脳の何処かで、いけないと分かっていても、その甘美な感触にあらがえない。

 頭の芯がぼうっと痺れ、気持ちいいとすら思った。

 あたしは欲しがっていた。

 もう、何がどうなっても良い。秋月くんになら何をされても良い、と。

 メスの本能で彼を求めていた。

 甘いキスが終わる頃には、意識が朦朧とし、息が上がっていた。

 この後、秋月くんが何も言わなければ、あたしは流れに身を任せ、彼に抱かれていたのかもしれない。

「……先生。俺」

 秋月くんの、熱を帯びた声を聞いてハッとなった。ただのノリとかそんなのじゃない。彼はあたしを年上の教師と知りながら、ひたむきな愛情を向けている。
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