ボーダーライン。Neo【上】
 一度躊躇うものの、やはりここまで来たからにはと、思い切って障子戸を開ける事にした。

 男女共に十数人。戸を開けると、少しの間静まり返り、一斉に注がれる視線と目が合った。

 よくここまで集まったな、と感心していると、奥に座った内田らしき男が目を見張り、口を開いた。

「檜、か?」

 ああ、と気付き、着けていた帽子と伊達眼鏡、マスクを外した。

「久しぶり?」

 そう言って穏やかに笑うや否や。黄色い声を上げ、真っ先に駆け寄って来たのは奈々だ。

「檜~っ!! 会いたかったよ~っ!!」

「うわっ!? 奈々??  どうでも良いけど抱きつくな!」

「うわーん、だってぇーっ」

 奈々の行動を見て、皆が一斉にどっと笑う。

「奈々は相変わらず、テンション高いな」

 壁に寄りかかったまま呆れて嘆息すると、彼女は半分泣き顔で、今日は特別だよー、と尚もしがみついて言う。

「檜っ、こっち来て座れよ?」

「あ、うん」

 雰囲気が少し変わりはしたが、手を挙げて言うのはやはり内田だ。

 奈々は僕のコートをしっかり掴んだまま、子供のように付いて来る。

「ったく。未来の旦那の前でフツー違う男に抱き付くか?」

 座りながらそうこぼすと、奈々は愛嬌じみてペロリと舌を出した。

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