ボーダーライン。Neo【上】
 その時頼んだウーロンハイが、入り口付近の生徒から回され、手前へ置かれた。

 ありがとう、と口にするが、周りの女子達はあたしの指輪を食い入る様に見ていた。

「うわぁ~、凄いダイヤ」

「私も見せて見せて~」

 あたしは0.3カラットのダイヤが付いた指輪を、仕方無く彼女らに向ける。

 そして後でこっそりと外しておこうと思った。

 この指輪を着けたまま檜と会うのは、何となくだが、後ろめたい。

 彼が昔、誕生日プレゼントとしてくれた指輪は、既に封書で送り返しているのだ。こんな目立つダイヤの指輪など着けていられない。

 あたしは生徒の興味が引いた頃、持ってきた鞄のポケットに外した指輪をそっと仕舞った。

 ポケットに入れた時。チャリンと音がし、そこに小銭が入っているせいだと気付いたが。気にせずそのままにした。

 お酒が進むにつれ、皆わいわいと盛り上がり始めた。

 内田くんが携帯片手に嬉しそうに言った。

「おっ、みんな!! 今から檜来るって!! 八時には着くらしいぞ!?」

 ーーえ。

 ドクン、と鼓動が鳴った。

 おお~!!、 マジマジ~!?、 きゃあ~っ!!

 周囲から歓声の上がる中、あたしは眉間を歪めたまま俯き、脇腹をギュッと押さえ付けた。
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