ボーダーライン。Neo【上】
立ち去ろうとする彼の背を呼び止め、あたしは思わず口を開いた。しかしそこで一呼吸、おく。
ーー美波と。電話、いつから……。
「先生?」
問いは声にならず、あたしは慌ててかぶりを振った。それを聞いたら盗み聞きしたのもバレてしまう。
「あ、ううん。なんでもっ」
「……そ?」
「うん。気をつけて帰ってね?」
「あ、うん」
踵を返した彼の背を見つめ、グッと奥歯を噛み締める。
嫉妬だ。
秋月くんに告白されて、舞い上がって。自分本位な都合ばかりに思い悩んでいたけれど……。秋月くんはモテるんだ。それも尋常じゃないほどに。
今のあたしじゃ彼を受け入れられないのに、彼に近付く周りの女の子達に、あたしは既に嫉妬している。
どうしよう。秋月くんが心変わりをしたら。そう考えたら急に不安が広がった。
今はあたしを想ってくれているのかもしれないが、人の気持ちなんて当てにならない。
彼の前に、とびきり美人で可愛い女の子が現れたら、きっと直ぐにその子を好きになる。
不確定な未来を思い、眉間を歪めた。
何て身勝手で浅ましいんだろう。つくづく自分が嫌になる。
あたしは車に乗り込み、零れ落ちた涙を指先で拭った。
***
ーー美波と。電話、いつから……。
「先生?」
問いは声にならず、あたしは慌ててかぶりを振った。それを聞いたら盗み聞きしたのもバレてしまう。
「あ、ううん。なんでもっ」
「……そ?」
「うん。気をつけて帰ってね?」
「あ、うん」
踵を返した彼の背を見つめ、グッと奥歯を噛み締める。
嫉妬だ。
秋月くんに告白されて、舞い上がって。自分本位な都合ばかりに思い悩んでいたけれど……。秋月くんはモテるんだ。それも尋常じゃないほどに。
今のあたしじゃ彼を受け入れられないのに、彼に近付く周りの女の子達に、あたしは既に嫉妬している。
どうしよう。秋月くんが心変わりをしたら。そう考えたら急に不安が広がった。
今はあたしを想ってくれているのかもしれないが、人の気持ちなんて当てにならない。
彼の前に、とびきり美人で可愛い女の子が現れたら、きっと直ぐにその子を好きになる。
不確定な未来を思い、眉間を歪めた。
何て身勝手で浅ましいんだろう。つくづく自分が嫌になる。
あたしは車に乗り込み、零れ落ちた涙を指先で拭った。
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