ボーダーライン。Neo【上】
 普段から嘘ばかりついているから、そのバチが当たった。今日だって、慎ちゃんに嘘をついて友達と飲むと言って出て来たし。クラス会の場では、檜に会うのが恐くて彼氏を理由に店を出た。

 ーーあたしって最悪だな。

 とりあえず寒いし、コートはちゃんと着ておこう。

 どうやったら取れるか考えないといけない。何か長い棒でも有れば、手前に寄せる事が出来るんだけど……

 そう思い、目を動かした所で、声をかけられた。

「だい、丈夫ですか?」

「ひゃっ!??」

 自分の事に集中し過ぎて、人が居る事にも気付かなかった。

 あたしはビックリして顔を上げた。

 ーーうそ。

 瞬間。時が止まったかのように錯覚した。

 両目をぱっちりと開け、あたしは彼を見ていた。

 髪を、いつかのスズランヘアーにセットし、何処かのパーティにでも行って来たのか、上品な着こなしをしている。

 高そうな細身のスーツに、黒のロングコートがとてもよく似合っていた。

 ふと、初めて出会ったシュチュエーションと似ているな、と思った。

 靴の踵が折れて、交差点の前で座り込んでいたあの日。彼は同じ言葉で声をかけてくれた。

 ーー檜……何でここに? 夢?

「あ。秋月、くん」

 震えた唇で呟き、濡れた瞳を数回瞬いた。
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