ボーダーライン。Neo【上】
「いやいやいや。普通気付くだろ?」

「か、考え事してて。ボーっとしてたんだもんっ」

 まさか、あなたの事を考えていました、とは口が裂けても言えない。

「アハハハハっ、どんくせー!」

「なっ!?」

 何て失礼な物言いだ、と思うが、そういえば彼は元々こういう性格だったと思い出す。

 思った事をズケズケと発する、嘘のつけない性格なのだ。

 ーーあたしとは大違い。

「まぁまぁ。無事戻って良かったじゃん? じゃ~ね?」

「え?」

 すれ違いざま肩をポンとされ、振り返る。檜はビニール袋を提げたまま車へと向かった。

 黒いコートの後ろ姿を見つめ、あたしはつい、帰っちゃうの、と呟きそうになる。

「あ。あの、」

 檜が運転席へ乗り込む前に、あたしは近付き、声を掛けていた。

「も、もう少し。話していたいんだけど?」

 自分でも何を言っているんだろう、と思い、語尾は小さくなった。

 だけど。檜の持つ独特の空気感にまだ寄り添っていたかった。

 檜はチラリとこちらを見やり、真顔で言った。

「俺はもう話す事なんて無いけど?」

「え……」

 あたしは分かりやすいほど、ショックを受けていた。

 そうだよね、と眉が下がる。
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