ボーダーライン。Neo【上】
/過去
◇ 日記 5
1
仕事のない休日。あたしは余裕をもって、晩御飯の支度をしていた。誰かの為に作る訳もなく、自分を楽しませる為の料理だ。
元より、料理は嫌いじゃなかった。スーパーで売っているお惣菜より、自分で作った方が経済的で美味しいと気付いてから、時間が許す限り自炊を心がけている。
茶碗蒸しの具を入れ、卵液を注ぐと、あたしは蓋をしめた。照り焼きにするブリもそろそろお酒で臭みが抜けたかな、とフライパンで焼き始める。
「あとは~」
ーーお味噌汁は余っちゃうから、インスタントでいいや。
蒸し器の用意ができ、茶碗を置くと、エプロンのポケットが急に震え出した。電話だと知りつつ、先にタイマーをセットする。
液晶を見つめ、笑みを浮かべた。
「もしもし?」
『あ。先生? 俺』
「うん。秋月くん、こんばんは?」
手持ち無沙汰なので、とりあえずは台所の椅子に座る。心なしか、彼の声が弾んで聞こえた。
『こんばんは。……今、何してんの?』
「今は。晩御飯作ってるところ」
『あ~、ごめん。料理中ならまた後で』
「あ、いいのいいの。大丈夫だから。気にしないで?」
『そう?』
「うん」
『じゃあ~、晩御飯なに作ってんの?」
そこであたしはフッと吹き出した。フライ返しで、焼いているブリをひっくり返した。
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仕事のない休日。あたしは余裕をもって、晩御飯の支度をしていた。誰かの為に作る訳もなく、自分を楽しませる為の料理だ。
元より、料理は嫌いじゃなかった。スーパーで売っているお惣菜より、自分で作った方が経済的で美味しいと気付いてから、時間が許す限り自炊を心がけている。
茶碗蒸しの具を入れ、卵液を注ぐと、あたしは蓋をしめた。照り焼きにするブリもそろそろお酒で臭みが抜けたかな、とフライパンで焼き始める。
「あとは~」
ーーお味噌汁は余っちゃうから、インスタントでいいや。
蒸し器の用意ができ、茶碗を置くと、エプロンのポケットが急に震え出した。電話だと知りつつ、先にタイマーをセットする。
液晶を見つめ、笑みを浮かべた。
「もしもし?」
『あ。先生? 俺』
「うん。秋月くん、こんばんは?」
手持ち無沙汰なので、とりあえずは台所の椅子に座る。心なしか、彼の声が弾んで聞こえた。
『こんばんは。……今、何してんの?』
「今は。晩御飯作ってるところ」
『あ~、ごめん。料理中ならまた後で』
「あ、いいのいいの。大丈夫だから。気にしないで?」
『そう?』
「うん」
『じゃあ~、晩御飯なに作ってんの?」
そこであたしはフッと吹き出した。フライ返しで、焼いているブリをひっくり返した。