ボーダーライン。Neo【上】
「言うと思った」

『ハハっ、ワンパターン、か?』

「うん。秋月くんいつも訊くから。……ちなみに、晩御飯はブリの照り焼きと茶碗蒸し」

 またタイマーをセットする。

『すげー』

 ーー秋月くんにも、食べさせてあげたいなぁ。

 ふとシンクに目が留まり、あたしは立ち上がった。肩と耳で携帯を挟んでまま、会話を続ける。

「ところで、秋月くん」

『なに?』

「何か良いことあったでしょう?」

 水道の取っ手を上げ、お湯で洗い物を始める。

『分かる??』

「うん。声の調子で」

 受話口で秋月くんが、アハハと笑う。

『いや、実はさっ。今度のライブイベントに出させて貰う事になって』

 ライブ? とあたしは首を傾げた。その拍子に携帯を落としそうになり、若干慌てる。

 お湯を止め、再びフライパンのブリを見た。合わせ調味料を入れて、煮絡める。

『うん。馴染みのライブハウスで、いくつかのバンドが歌う対バンってイベントが、月に一回あるんだけどさ。まだ俺ら、それに一回も出た事無くて』

「そうなんだ? 結構、競争率とか激しいのかな?」

『う~ん、どうなのかな。俺らの場合は店のオーナーにまだまだって待ったかけられてたから、出さして貰えなかったけど。そこそこ人気が無いと難しいとは思う』
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