ボーダーライン。Neo【上】
/現在
◇ ♀
冷えた畳は既に、あたしの座した部分だけが温もりを帯びていた。
「……まさか本当に会うなんて。思わなかったなぁ」
日記帳の文字を指先でなぞりながら、ほんの少しの笑みを浮かべる。
とんだ策士だと呆れて笑ったのを今でも覚えている。
覚えているのだ。元生徒である彼、秋月 檜に関する情報なら。
彼の生まれ育ちはイギリスのロンドンで、十二歳の頃日本へ移り住んだ帰国子女。母親はイギリス人の血が半分流れるハーフ故、檜はクォーターだ。
FAVORITEのHinokiとして、彼は最早知名人だが、本名も誕生日も血液型も独特の空気感も寝顔も。
檜に関する事なら、五年経つ今でもしっかりと覚えている。最早忘れられない、と言った方が正しいのかもしれない。
本当に好きだった。
心の底から叫び出したいほど、彼を愛していた。
自らの真面目さや正義感という、あたしを形取る全てを見失うほどに、彼を愛し、あの頃のあたしにとっては檜が全てだった。
盲目の恋に溺れ、結果、どうなったか。足がもつれて沈み、息が出来なくなった。
自身の浅ましさやあざとさ、嫉妬深さといった醜態をも自覚した。自己嫌悪、というものが胸に深く刻み込まれた。
冷えた畳は既に、あたしの座した部分だけが温もりを帯びていた。
「……まさか本当に会うなんて。思わなかったなぁ」
日記帳の文字を指先でなぞりながら、ほんの少しの笑みを浮かべる。
とんだ策士だと呆れて笑ったのを今でも覚えている。
覚えているのだ。元生徒である彼、秋月 檜に関する情報なら。
彼の生まれ育ちはイギリスのロンドンで、十二歳の頃日本へ移り住んだ帰国子女。母親はイギリス人の血が半分流れるハーフ故、檜はクォーターだ。
FAVORITEのHinokiとして、彼は最早知名人だが、本名も誕生日も血液型も独特の空気感も寝顔も。
檜に関する事なら、五年経つ今でもしっかりと覚えている。最早忘れられない、と言った方が正しいのかもしれない。
本当に好きだった。
心の底から叫び出したいほど、彼を愛していた。
自らの真面目さや正義感という、あたしを形取る全てを見失うほどに、彼を愛し、あの頃のあたしにとっては檜が全てだった。
盲目の恋に溺れ、結果、どうなったか。足がもつれて沈み、息が出来なくなった。
自身の浅ましさやあざとさ、嫉妬深さといった醜態をも自覚した。自己嫌悪、というものが胸に深く刻み込まれた。