ボーダーライン。Neo【上】
ーー幸子とは、ここでお茶を飲んでちょっと話すだけだ。一時間かそこらで帰るだろう。
ポットのお湯が沸け、また玄関に目を向けた。
ーーそれにしても。やけに遅くないか?
「まさか、帰った、とか?」
ーーいやいやいや、あり得ないだろ。さっきこの部屋の鍵だって渡したんだ。黙って持ち帰るなんて事は、絶対にない。
それなら、と別の可能性を考えた。
婚約者から急に電話が入り、話し込んでいる、とか?
ーーそれならあり得る。急に鍵を返しに来て、そのまま家に帰るかもしれない。
何にしても、俺には関係ないよな。
冷蔵庫から出したペットボトルの水に口を付けると、ガチャン、と玄関の扉を開ける音がした。
幸子が入ってきたと知り、ホッと胸を撫で下ろす。
「遅かったね」
僕は平静を装いながら言った。
リビングに入った幸子を見て、またポットを沸かし直した。
「ええ」
彼女はコートを脱ぎながら、部屋の内装を窺っている。僕はそんな彼女をジッと見つめた。
数年ぶりに見る幸子は、あの時のようにやはりワンピース姿だった。コーデュロイの白のワンピースがよく似合っている。
「突っ立ってないで座れば?」
「あ、うん」
二度目に湧いたポットからお湯を注ぎ、コーヒーでいい? と訊ねた。
「うん。ありがとう」
「いいえ」
ポットのお湯が沸け、また玄関に目を向けた。
ーーそれにしても。やけに遅くないか?
「まさか、帰った、とか?」
ーーいやいやいや、あり得ないだろ。さっきこの部屋の鍵だって渡したんだ。黙って持ち帰るなんて事は、絶対にない。
それなら、と別の可能性を考えた。
婚約者から急に電話が入り、話し込んでいる、とか?
ーーそれならあり得る。急に鍵を返しに来て、そのまま家に帰るかもしれない。
何にしても、俺には関係ないよな。
冷蔵庫から出したペットボトルの水に口を付けると、ガチャン、と玄関の扉を開ける音がした。
幸子が入ってきたと知り、ホッと胸を撫で下ろす。
「遅かったね」
僕は平静を装いながら言った。
リビングに入った幸子を見て、またポットを沸かし直した。
「ええ」
彼女はコートを脱ぎながら、部屋の内装を窺っている。僕はそんな彼女をジッと見つめた。
数年ぶりに見る幸子は、あの時のようにやはりワンピース姿だった。コーデュロイの白のワンピースがよく似合っている。
「突っ立ってないで座れば?」
「あ、うん」
二度目に湧いたポットからお湯を注ぎ、コーヒーでいい? と訊ねた。
「うん。ありがとう」
「いいえ」