ボーダーライン。Neo【上】
 ◇ ♀

 あたしは、今から3ヶ月ほど前の事を思い出していた。

「そっか。サチ、結婚するんだ?」

 多忙な美波に、休みを合わせた平日。あたしは久しぶりに会う親友に、結婚の報告をするため、買い物の途中でカフェに立ち寄った。

「先ずは。おめでとう」

 意外そうな反応を示すものの、にっこり笑う美波に、ありがとう、と微笑んだ。

「でも。何か、意外だった」

「意外?  どうして?」

 美波が何を思っているのか、何となく察しはついていた。

「こう言ったら悪いけど。サチは葛西さんと、結婚はしないだろうなって気がしてた」

「そうなんだ? けど、あたし自身、結婚願望はあるよ? いい奥さんになって、子供を産むの」

「それはサチのお母さんが望んでる事でしょ?」

 図星を突かれ、それも有るけど、と呟く。

「あたし。慎ちゃんの事は好きよ? じゃなきゃプロポーズを受ける筈無いし、同棲にもOKしない」

「うん。そうだね。付き合いは一年でも、出会ってからの期間を考えたら、もう三年だもんね?」

「……ん」

 あたしは目を伏せ、アイスティーを見つめた。

「でも、サチ言ってたじゃん? 付き合った当初も。好きだけど、愛してるかどうかは分からないって」

「ふふっ。そんな事言ったっけ?」

「言ったよ? 一緒にいると落ち着くけど、変に冷静でのめり込めないって。あの子の時みたいに、夢中にはなれないって」
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