ボーダーライン。Neo【上】
 ーーあなたは全然分かってない。あたしという女が、どういう性格なのか。

「好きだからよ?」

 ーーだから。たとえここで本音を漏らしても、あなたは気付かない。

「はぁ?」

 ーーほら、やっぱり。

 真摯に告げているにも拘らず、檜はふざけるなと言いたげに嘲笑っていた。

 過去、檜にしたあたしの仕打ちを考えるとそれも当然か、と思うのだが。

「あなたが、好きだから」

 あたしは彼を見つめ、繰り返していた。

 二度目の言葉を受け、彼からスッと笑みが消えた。

「俺を。一方的に捨てたのはあんただろ?」

 瞬間、ぞくっとした。声色と視線から、それが心からの怒りであると悟る。

「最後に会ったのがあんな形で、話し合いすら出来なくて、勝手に連絡を経たれた。俺が傷付かないとでも思ったか!?」

 檜の、あたしに対する怒りを見るのは初めてで。後ろめたさから前を向けず、俯いた。

 そして、やっぱり、と思ってしまう。

 あたしとしては、心で思っただけだったのだが。つい声に出ていたのだろう。檜は眉をひそめ、何が、やっぱり? と怒ったままで訊ねた。
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