ボーダーライン。Neo【上】
あたしは居たたまれなさに一度視線を逸らした。
「あたしの事。恨んでたんだね?」
「恨む??」
「……そうよ」
檜は少し考え、そりゃあそうだろ、と口にする。
「あんなに好きだったんだ。疲れた、なんて。そんな一言で終わらせた先生に、ムカつかない訳ない」
聞いていて、彼の怒りが鎮まるのを感じた。代わりに、その声には哀しみが滲んでいる。
ただ、胸が痛んだ。
それから檜はどこか思案顔で黙り込んでしまった。
眉根を寄せたまま、煙草を口にし、煙りを吐き出した。その様子をジッと見つめていた。
あの頃はここまで遠慮なく、彼を見つめる事など出来なかった。無意識のうちに、見納めておこうと思ったのかもしれない。
「いいよ?」
程なくして口を開いた彼は、煙草の火を消した。
「抱いてやる。その代わり、タダじゃない」
「お金、とるの?」
あたしは目を丸くし、瞬きした。
「そりゃあそうだろ? 何か見返りを貰わないと割に合わない」
そこでようやく彼の視線と交わった。檜は少しだけ、目を細め、あたしを試しているように見えた。
ーーお金を払うって事は。あなたは商品、そういう事よね? だったらあたしにとっても都合が良い。
あなたに対する罪悪感を、これ以上増やさないで済むのだから。
「あたしの事。恨んでたんだね?」
「恨む??」
「……そうよ」
檜は少し考え、そりゃあそうだろ、と口にする。
「あんなに好きだったんだ。疲れた、なんて。そんな一言で終わらせた先生に、ムカつかない訳ない」
聞いていて、彼の怒りが鎮まるのを感じた。代わりに、その声には哀しみが滲んでいる。
ただ、胸が痛んだ。
それから檜はどこか思案顔で黙り込んでしまった。
眉根を寄せたまま、煙草を口にし、煙りを吐き出した。その様子をジッと見つめていた。
あの頃はここまで遠慮なく、彼を見つめる事など出来なかった。無意識のうちに、見納めておこうと思ったのかもしれない。
「いいよ?」
程なくして口を開いた彼は、煙草の火を消した。
「抱いてやる。その代わり、タダじゃない」
「お金、とるの?」
あたしは目を丸くし、瞬きした。
「そりゃあそうだろ? 何か見返りを貰わないと割に合わない」
そこでようやく彼の視線と交わった。檜は少しだけ、目を細め、あたしを試しているように見えた。
ーーお金を払うって事は。あなたは商品、そういう事よね? だったらあたしにとっても都合が良い。
あなたに対する罪悪感を、これ以上増やさないで済むのだから。