ボーダーライン。Neo【上】
 程なくして、室内着に着替えた慎ちゃんが居間にあるコタツテーブルの椅子に座った。

 あたしは晩御飯の支度を手際よく済ませ、順に料理を運ぶ。

 彼と同じく椅子に座ると、不意に「そう言えばさ」と何気なく問われた。

「サチ、さっきまでどこにいたの?」

「え?」

 慎ちゃんは、壁の時計を一瞥し、テレビのチャンネルを変える。

「いや。こたつ点いて無かったから」

 彼が何を言いたいのか、瞬時に理解した。

 あたしは普段から節電を心がけ、あまりエアコンはつけない。だから家でくつろぐ時は大体居間にあるこたつをつけている。

 十二月上旬の、冬真っ只中のこの季節に、家に居ながら暖房もつけず、何かをしていたのか。又は何処かへ出掛けていたのか。彼はそう訊きたいのだ。

 慎ちゃんは、それが彼の性分なのか、こういう小さな事が気になる性格だ。

 特に、あたしのプライベート、交友関係に関しては常に把握しておきたいと思う節があるらしい。

 彼の過去を思うと、おおよその束縛は理解できた。だからいちいち突っかかろうなんて思わない。

 あたしは事も無げに目を瞬き、笑顔で(うそぶ)いた。
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